「よろず相談室」では様々な家づくりに役立つ知識や情報を各相談員がライターと
なって持ち寄って本を出版する予定です。
以下の文章は私の分担のものです。いろいろな知識が満載される予定なので、本屋
さんでみかけましたら御一読してみてください。

---------------------------------------------------------------------------------------

「青田売りのもともとの意味は、まだ収穫していない稲を(青いうちに)見込み収穫高で
売りに出す事です。不動産業界では未完成の建物(宅地)の売買を言いますがそれには
よく見るといくつかのパターンがあります。」

 1 住宅の取引形態

   住宅(宅地)の取引形態は(中古住宅や定期借地などを除く)大きく3つに分類
   できます。
    A 分譲宅地の販売
      土地のみの売買。建物の設計、建築はまったく自由。
    B 建売住宅
      すでに出来上がっているか、工事中の建物と土地の売買。確認申請がなされていて
      確認番号が取れていることが必須。広告にも確認番号を記載しなくてはいけない。
      つまり設計は終わっていて工事業者も決定している。売主は土地建物の瑕疵
      に責任をもたなければならない。
    C 建築条件付宅地
      建物の「請負」を前提に土地の売買を行う。建物の建築を請け負う事が出来るものは、
      土地の売り主(売り主の100%出資の子会社を含む)またはその「代理人」に限られています。
      (瑕疵責任は売主にある)
      広告には必ず建築条件付と明確に記載しなくてはいけません。わかりにくい表示でも違反広告に
      なります。その他いくつかの必須項目をあげると

        ・ 契約は、土地の売買契約と建物の請負契約の2本立て。
        ・ 土地の売買契約と建物の売買契約が同時であることはない。
        ・ 3ヶ月の間に、住宅の設計・見積をしてもらい、建物の請負契約をする。
        ・ 3ヶ月以内で、住宅の設計内容、見積に不満がある場合は解約できる。
        ・ 3ヶ月を越えることは出来ない。
        ・ 解約した場合、土地売買で支払った金銭は全額返ってくる。
        ・ 誰と建物の請負契約をするのかが書かれている。

 2 Bの建売住宅の場合
    
   マンションも形態としてはこの中に入ります。マンションなどは工事期間が長いので工事中
   から販売を始めることがほとんどです。建売でも建築中の販売は多いです。この場合、モデル
   ルームを作ったりパンフレットで図面やパースを公開しますが、竣工後に「出来上がりと思惑
   が違った」というトラブルや欠陥の発見などのトラブルが発生することがあります。
   契約前に完成した建物を見ることができない為、これも青田売りと呼ばれます。
   注意が必要なのは、確認申請していないものをフリープランと言って販売することは違法ですし、
   建築確認のない建売分譲住宅の売買をするのに、名目上「建築条件付売地」と表示して、
   建物プランも事実上特定し価格も決まっているものも宅建業法違反です。(33条及び表示規約
   第5条違反)

 3 Cの建築条件付宅地の場合

   建築条件付の宅地販売には前記のような規制があります。
   停止条件と呼ばれるもので、また土地と建物も別契約になるのが本来の販売です。
   ところがこうした規制を受けるのを嫌い、土地と建物を同時に契約させようとする業者がいます。
   (建物の契約をしてしまうと停止条件がきかなくなる)
   手口は建売と建築条件付きの販売方法を曖昧にして、モデルプランを見せて建売のように契約させます。
   建売住宅には確認番号を記載する事が必ず必要です。建築条件付の場合には、建築条件付であること
   を広告に明示して、停止条件を説明することが必須です。

   これらを曖昧にして、土地と建物の契約を同時にさせて、停止条件や時には瑕疵責任も曖昧な状況で
   建築を下請け業者に丸投げする事を「売り建て」もしくは「青田売り」と言ったりします。
   当然違法販売になります。

   関連宅建業法規   広告の開始時期の制限(33条)、
                工事完了時における形状・構造等の書面による説明(35条1項5号)、
                契約締結等の時期の制限(36条)
                手付金等の保全(41条)

 4 独占禁止法

   本来、土地の売主、またはその代理人が建物を建築する事を条件に土地を販売する事は
   「優越的地位の濫用」「抱きあわせ販売の禁止」という理由で独占禁止法に違反します。
   ただし、以下の3つの条件を「すべて」満たしてる場合には違反になりません。

    ・土地売買契約後3か月以内に建物の建築請負契約が成立することを停止条件として
     土地売買契約を締結すること(解除条件は不可)。
    ・建物の建築を請け負うことができる者は、土地の売主(売主の出資子会社を含む)
     又はその代理人に限られること。
    ・建築条件が成立しなかったときは、預り金、申込証拠金その他名目の如何を問わず、
     受領した金銭はすべて速やかに返還すること。

   
   不動産業界が制定した公正競争規約では、上記の内容を適正に表示することを義務付けています。
   「フリープラン」や「自由設計」の広告は全て、建築条件付き宅地の販売のことで
   確認申請は出していないものです。
   以下のような業者はすべて建築条件付宅地販売に違反します。

   土地と建物を一緒に契約する事を強制する、またはほかにもお客さんがいて
   いま土地の売買契約と建物の請負契約をしないとそのお客さんに取られてしまう、
   建物の請負契約は後でいくらでも増減見積を提出するからなどど煽り、
   早急な購入の意思表示を要求する。

   広告以下の広さの建物しか建てられない、住宅設備機器などの変更に応じない、
   自由な間取りではなく数点のプラン集などからしか選択できない。
   ちゃんとした子会社、代理人以外の広告にも出ていない業者と請負契約を迫る。
   土地と建物のセット価格を広告に表示する。

   確認申請を提出済みの物件(変更するなどという)、土地代と建物代の両方の
   仲介手数料を要求する(仲介手数料は土地のみ)。
   建築条件付き宅地の説明をしない、曖昧にする(特に停止条件)。
   建築の請負契約が出来ないと土地の手付け金などが損になるなどという説明。
  (名目のいかんに関わらず全額返金しなくてはいけない。ただし、建築の請負契約
   をしてしまうと停止条件がきかなくなる)

  建築条件付き宅地は、独占禁止法の解釈から生み出された商売です。
  宅地建物取引業法が決めた取引ではありませんし、取り締まる行政窓口も曖昧でなかなか
  動きません。トラブルになったら自分で解決するしかありません。
  契約するときはよくよく考えて、しっかりした意思のもと契約しましょう。

 5 事例

----------------------------------------------------------------------------------------

 現地事務所にて購入申込書記入(金銭支払いはありません。)建売物件で気に入ったもの
 が契約済だったので、同じようなものをフリープランで建てれると聞き区画の押さえをしました。

 後日自宅にて事業・売主のYホームより宅建主任者と販売担当の方が来られ、重要事項説明書
 の説明を受け、本書と不動産契約証書(土地売買契約書・建設工事請負契約書)の押印をし、
 手付金10万円を支払いました。

 その後現地事務所にて設計事務所を交えての1回目の打ち合わせでしたが、設計事務所は
 同席せず(前日欠席の連絡がYホーム販売担当を通じてあり)事業・売主のYホームの
 設計担当と販売担当と私の3者で打ち合わせをし、予算・間取りの要望をお伝えし図面が
 あがりしだい、ご連絡いただくようお願い致しました。

 その後妻から、土地柄の雰囲気が馴染めず不安なのでどうしてもやめたいと言うの
 で早急にYホーム販売担当に電話を入れ契約解除の申し出をしました。ただ、違約金の
 心配もあり状況的にどうなのか?手付金放棄で解決できるのか違約金の発生が生じるの
 か返事をいただくよう伝えてあります。

 Yホームには 妻ともう一度よく話し合って考え直すように言われましたが、再考の意
 思はなく契約解除の意思を伝えたところ、上司、会社の方に相談するので時間がほしい
 と言われました。(1〜2日ほど)違約金のことについては設計事務所
 も動いているので発生するかもしれないとの事です。

 こういうケースの場合、違約金の支払いに応じなければならないのでしょうか?
 重要事項説明書と不動産契約証書(土地売買契約書・建設工事請負契約書)を見ると手
 付金放棄で契約解除に応じる文面もありますし、「設計事務所が動いている・・・」は
 契約文書でうたわれている契約の履行に着手にあたるのでしょうか?
 事業・売主のYホームの設計担当を通じて、設計事務所に予算・間取りの要望をお伝え
 し1週間ほど(20日の契約解除の申し出からだと5日)ですし、図面もなく確認申
 請、見積書ローン申込みの申請すらできていない状況で違約金発生は考えられますか?
 それと、不動産契約証書(土地売買契約書・建設工事請負契約書)で気になる点なんで
 すが・・・

 違約金発生となれば額も相当なので、仕方なく購入しようかと考えており、その意志も
 Yホーム販売担当に伝えてあります。しかし、後々仕事をお任せするわけですから極力
 それは避けたいのですが・・・

--------------------------------------------------------------------------------------

 この事例はまさに建築条件付きの曖昧な販売の良い例です。
 キーワードは「フリープラン」「土地売買契約書」「建設工事請負契約書」です。
 フリープランで確認申請もないという事はこの土地販売は建築条件付販売にあたります。
 建売の物件を見たあとなので、違いを明確に意識していなかった事が問題です。
 手付金も土地のものか建物のものか曖昧です。
 本来は土地契約だけを先にして、プランと見積もりを3ヶ月のうちに提出してもらって
 建築請負契約をすべきだったのです。
 業者の売り口上のまま、土地と建物を同時に契約してしまった為に停止条件を活用
 できなくなってしまいました。本来なら手付金も戻ってくる事例です。
 ただし、この業者も契約時に停止条件の事を曖昧にせず、ちゃんと説明していなければ
 違法販売になります。
 今回の場合は、弁護士さんの見解では、売主も相談者も手付金の意味を土地契約と工事請負
 契約の複合と考えているとみて、建売の場合と同じように手付金放棄のみで解決できると
 回答しました。