(1)断熱ってどういう事かというと

 現代の家は屋根があって囲われていて、雨をしのげるだけのものでは当然
 ありません。家の中がある程度安定した環境であることを求められます。
 基本的には温熱環境なのですが、その為の様々な工夫が昔から考えられてきました。

 冬は暖房器具としていろりや暖炉、オンドルといった建築に付随するものが
 発明されています。太陽の光はガラスがないころは利用しづらかったのですが、
 ガラスが出来てからは活用されています。日本では欧米ほど冬の寒さが厳しく
 なかったのでガラスがないころから南側を積極的に大きくあけて活用する文化
 になりました。
 欧米では冬の寒さが厳しく太陽もあてにならない地方が多かったので、逆に南
 にこだわらず暖炉などで暖めることが多く、南側採光にこだわる文化はあまり
 ないです。

 夏はエアコンが普及したのは近年なのでそれまでは、なるべく日射を調整する
 落葉樹を植えたり、よしずや深い軒で影をつくる、風が通りやすい家にする
 などの工夫しかありませんでした。
 日本は昔から蒸し暑い夏に対処する為に、家を建てるには夏を旨とせよ、と言
 われて開放的なつくりにしていました。

 近年はエアコンも普及して冷暖房が普通になってきましたがその効果をなるべく
 保持する為に保温効果を考えたものが断熱です。
 ところが日本家屋は前述のように開放的なつくりなので、従来は断熱も部分的に
 グラスウールを放り込むだけという状況だったので、あまり効果的な断熱効果は
 期待できません。

 従来の断熱の考え方では壁の断熱性能を上げることしかありませんでした。
 実際には内部環境として考えるとそれだけでは欠損している部分があります。
 それは、窓、屋根、床下の3点です。

 窓はガラス1枚で外部環境と接しています。窓が熱の欠損部位としては一番
 大きいところです。よく冬に窓から冷たい風がくる気がしますが、これは
 窓で冷やされた室内の空気がふきつけているのです。

 屋根は、夏に太陽の直撃を受けます。屋根材はじりじり焦がされてその熱は
 屋根裏から部屋に侵入してきます。また、温度が上がった屋根材からは赤外線が
 放出され室内の人間を直接(じ〜んわり)暖めます。ところが、従来は天井裏
 に申し訳程度のグラスウールがのっかっているだけです。
 これでは蒸し風呂になって当然です。

 冬には床下換気口を通して床下には寒い風が通っています。
 畳やフローリングのすぐ下には冬の外気があるのです。にもかかわらず床に
 断熱材を入れている家は従来はほとんどありません。あっても申し訳程度
 です。これでは、足元からしんしんと冷えてくるのは当たり前です。
 これではストーブをがんがん炊いて、顔はほてっているのに足元はいっこうに
 あたたまりません。
 それで床暖房にするのも本末転倒です。ここさえ断熱してあれば床が冷える事
 はないのです。