(2)高断熱は特別なもんじゃない
 高断熱にする第一の目的は、温度の局所的な不均一をなくす事です。
 これは例えば、冬に足元は寒いのに顔のあたりはほてるほど暑い、
 部屋は暖かいが廊下などに出ると寒い(風呂やトイレでのお年寄り
 のヒートショックなどは大きな問題)、夏に2階が蒸し風呂になる、
 などの状態です。
 これらは不快なだけではなく、時には健康問題や冷暖房の使いすぎ
 といった問題をひきおこします。

 ここで注意したいのは、「一年中同じ温度、湿度でなければならない」
 という誤った解釈です。
冬に寒く、夏に暑いのはあたりまえの事で
 洋服で調整するのがあたりまえです。冬にもTシャツ1枚で過ごせる
 などと言うのはあきらかに過度な暖房です。
 健康な生活とは四季の違いを無視することではありません。
 あくまで、寒さ暑さをしのぎやすい温熱環境にコントロールする
 というのが大事です。

 したがって、当然そのレベルには地域差があります。北海道から
 沖縄まで日本の環境は非常に大きな差があり、文化も違います。
 それを一律の数字で決め付けるのはもっとも避けるべき事です。
 (いわゆる何とか値とかコマーシャルベースで使われるものです)

 もう一つの目的は環境負荷を減らすことです。
 冷暖房することによりエネルギーを使いますが、そのエネルギー
 を極力減らすことにより環境負荷が減ります。
 結果的にさいふへの負荷の減りますが、不必要な冷暖房をしていれば
 もとの木阿弥ですので前述のような誤解は避けるべきです。

 また、もともと高断熱は寒冷地対策で出てきたものです。
 それが冷房の保持にも役立つという事から温帯地にも使われ始めて
 きました。
 しかし、もともと南に大きな開口(窓)をとるのが基本的なつくり
 の家で高断熱になっているということは夏に侵入してきた熱を溜め込む
 事にもなっているのです。
 実際、北海道では高断熱の家が増えた為にエアコンの普及率が高まって
 いるという皮肉な現象もあります。
 したがって、高断熱の家では特に、風が通り抜ける設計や日射対策
 大事になってきます。さもないと夏はエアコンがないと過ごせない家という
 本末転倒の結果になってしまいます。

 したがって高断熱とは、窓・屋根・床下といった従来の断熱の欠損部分
 をきっちりして、尚且つ壁の断熱性能を上げてやり、日射や風の通りを
 大事にしてあげるというごく基本的であたりまえの事をするだけのことです。
 けっして、特別なものではありません。
 妙な数値の羅列や怪しい技術用語に振り回される必要はありません。