大気汚染や花粉といった外部環境の要因を除いた室内空気環境の汚染の
発生原因としては3種類が考えられます。

  1 化学物質的要因    ホルムアルデヒドに代表される建材、家具から
  2 生物学的要因      ダニ・カビ・ほこり等
  3 物理的要因       電磁波、音、低周波等

3についてははっきりした因果関係がわかっていないのでとりあえず除きます。

1については厚生労働省が最近発表した主な原因物質は以下のものです。
ほかの物質の報告もありますが、空気中に放散されないものは影響がほぼない
としています。

   ホルムアルデヒド 建材に使われている接着剤等
   トルエン、キシレン 塗料の溶剤
   クロルピリホス  特定の防蟻材に使われるもの
   パラジクロルベンゼン、テトラデカン  衣類の防虫剤等

aはもっとも大きな影響がある物質です。なるべく無垢材を使う、合板を使う時
はFc0合板を使う等が大事です。ただ、家具や建具からも放出されます。
特に家具には注意が必要です。
溶剤をつかわないセラックニスを塗るとホルムアルデヒドを封じる効果があると
いう報告があります。また珪藻土のような左官材料はある程度吸着効果が期待
できます。基本的には換気が重要です。

bの対策に関してはオスモやリボスといった溶剤を使わない輸入塗料が有名です。
また、アトリエ・ベルという塗装屋さんがつくっている塗料も有名です。
http://www1.sphere.ne.jp/bell/

cに関してはなるべく使わない方向が望ましいです。ベタ基礎にして床下に侵入
しない構造にしておき、その後は点検できるようにしておくのが良いと思います。
シロアリは蟻道を造るので点検できれば発見できます。
シロアリに関してはここがおすすめです。シロアリに対する考えが180度変わり
ます。  岡崎シロアリ技研  http://www.sinfonia.or.jp/~isoptera/
またこのサイトの考えは人間と自然のかかわりに関して大きく考えさせられます。
生き物の「化学戦争」に参加せよ!」というくだりはぜひおすすめです。

dは防虫剤や殺虫剤、タバコなどもそうですが生活の中で考えていくことです。

2 に関してはセントラルクリーナーが有効です。
24時間換気も気密性が高くなった現代の住宅には必要だと思います。特に高気密を
うたった住宅でなくとも気密性は充分高いです。
その場合、ダクトをつかって部屋に給気を行うシステム(空調と組みあわせたり
熱交換機を使ったりするビル空調のようなシステム)は避けたほうが良いです。
ダクト内にカビやほこりが発生するとそれをばらまく事になります。
排気主体のアルデ換気システムや三菱の吸気システムなどの単純なシステムが
具合が良かったです。トイレの換気扇をつけっぱなしにしても良いです。
どのやり方でも室内のドアの下にはアンダーカットがあると良いです。
(2〜3cmで充分です)



ある勉強会のレジメより

1.現象として起きている事

・シックハウス症候群

 住宅に起因する健康被害全般を捉えた言葉である。すなわち化学物質ばかりでなく、ダニ・カビが原因である場合もある。(世間ではシックハウス=化学物質との見解の元に書かれている書物もあるが、ここではより広義の住宅が起因する疾病の総称と捉えたい)

・化学物質過敏症

 一定以上の化学物質に曝露した後に、体内にあるそれらの化学物質に関する反応が過敏になる症状で、症状が発生した後には極微量の化学物質にも反応し、めまいや喘息、頭痛等の症状を表す。
 曝露した物質以外の化学物質にも反応を示す多種性化学物質過敏症を引き起こすこともあり、このような状態になると、どのような化学物質があるか分からないような人混みの中等にも容易に出れない状態になる。
 新築等建物への入居だけでなく殺虫剤の使用や歯科医療などをきっかけに発症する例もある。北里大学の例では、約半数の患者が新築建物への入居を契機に発症しているとの報告がある。
 アメリカでは人口の10%が化学物質過敏症になっている。日本でも少なくともそのくらいか、それ以上の潜在的な患者がいる可能性がある。

・アレルギー反応

 体内に異物「抗原」(蛋白質や金属など)が入ると、それらの異物を排除する機能が働き体内に「抗体」(蛋白質)がつくられる。この「抗体」のひとつにアレルギー症状を引き起こす「Ige抗体」があり、この抗体によって様々な症状(喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症等)を引き起こす。

・軽度の中毒症状

 目がチカチカする、喉や鼻が痛いなどの症状=化学物質過敏症ではない。これらの現象は軽度の中毒症状であり、この状態が長く続けば化学物質過敏症になる可能性がある。すなわち体が「危ないぞ!」と警告していると思った方が良い。

・化学物質過敏症とアレルギー反応との関係

 化学物質によってもアレルギー反応を起こすことがある。(アレルギー反応を引き起こす化学物質の摂取量)>(化学物質過敏症を引き起こす摂取量)との関係がある。またアレルギーを持っている人は、化学物質過敏症にかかりやすい傾向がある。

2.健康被害起こる可能性が指摘されていること

・発ガン

 発ガンについては、世界中の研究所等で研究が進められているため、比較的データは揃っている。しかながら、どのくらい摂取するとどのくらいの割合でガンが発生するのかが分かっている物質は少ない。

・環境ホルモン

 環境ホルモンについて、化学物質過敏症に反応する濃度の約1000倍以下の濃度で発病するため、臨床実験などのデータは少ない。塩ビモノマーなどもビニールクロスから放出されているようだが、その数値は発表されていない。

3.それらの原因は何か

・建材等:建材に含まれる化学物質・家具:合板や接着剤、表面
      素材など
・衣服  :クリーニングの際のホルムアルデヒド、形状記憶シャツ

数万人単位でのアトピーと建築物の因果関係の調査が大阪の病院を中心に行われている。

4.なぜ化学物質が問題なのか、その対応は?

※化学物質の中には人体に対して毒性があるが、それらを把握するには

a.
どのような化学物質があるのか:何十万種類あり、毎年数千種類の新しい化学物質が開発されている。また建材メーカーが化学物質の種類を発表しないことにも問題がある。
b.
どの程度の量があるのか: 物質の多くが不明であるので、その濃度を計測することができない。
c.
それぞれの化学物質の毒性:どれだけ摂取したら反応を起こすのか、また死ぬのかが分かっていない。

しかしながら現実にはごく一部の化学物質についてしか解明されていない。

それでも何らかの対応をするためには

a.
化学物質の空気中の濃度をどう設定するか
b.
どの物質(建材等)にどんな化学物質が含まれるか、またその濃度はどうか

ということを検討する必要がある。空気中の濃度の設定を考えるには、建材等からの放出がどの程度あるのか(含まれていても室内空気中に放出されなければ良いとの考え方もある)またどの部位で使用するのか(室内への影響度合いの違いや温度環境の違い)なども考慮しなければならない。

5.どんな物質が悪さをするのか、どんな建材にどんなものが入っているか?

・樹脂原料
・溶剤
・可塑(かそ)剤
・防腐、防かび剤
・防虫、防蟻剤
・難燃剤
・その他、抗菌剤など

6.室内化学物質汚染に対する行政の対応は


行政の対応について具体的な数値の規定などがどの程度なされているのかを説明する。現実的には化学物質過敏症やアレルギー疾患などに対する具体的指針は出されていないのが現状である。

・厚生省が発表しているホルムアルデヒドの室内濃度指針値30分間平均0.1mg/m3(0.08ppm)がある。
・厚生省は、各地の保健所をこれらの問題の窓口にしている。
・建設省、通産省などからなる「健康住宅研究会」の発行した「設計・施工ガイドライン」では具体的な数値規定はないものの以下の3物質及び3薬剤について「優先取組物質」としている。


    3物質 ホルムアルデヒド  トルエン    キシレン
    3薬剤  木材保存剤  可塑(かそ)剤  防蟻剤

7.団体等の規格


・ビニールクロス
JIS 日本工業規格
JAS 日本農林規格
RAL ドイツの品質検査規定
ISM 壁装材料協会の安全規格
SV ビニル壁紙安全規格:日本ビニル工業会
・合板
JAS 日本農林規格